限界を超える(しらたメルマガ バックナンバー)

  こんにちは! ツタエルのしらたです。

東京はお盆を過ぎてからめっきり涼しくなり

早くも秋の気配が漂っています。

暑いときは、「早く涼しくならないかなぁ」なんて思っていたのに、

涼しくなると、なんだか急に寂しくなってしまうのは

私だけでしょうか?

ひぐらしの声が切なく胸に響く夏の終わり、

この夏、私が体験した「ある出来事」についてお話したいと思います。

ちょっと長いですが、どうぞ最後までおつきあいくださいませ。

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          ツタエルメルマガ! 【第105号】
 
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                    「限界を超える」
 
 
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前回の「しらたメルマガ」でお伝えした

“シュタイナー土曜学校”の3年生の子ども達と

山梨へ「家づくり合宿」に行ってきました!

 

 

※前回のメルマガを読まれていない方に、かいつまんで説明すると・・・

 

“シュタイナー土曜学校”は、ドイツの自由教育「シュタイナー教育」を

土曜日だけ体験したいという子どものためのフリースクールで、

私はそこで3年生の子ども達に勉強を教えています。

 

シュタイナー教育では、3年生の生活科の授業で

生きる基本である衣食住―「服づくり・米づくり・家づくり」を体験します。

特に「家づくり」は本格的で、雨風を凌げる小屋を子ども達の力で建てます。

この夏、私は子ども達と共に「家づくり」を体験してきました!(説明おわり)

 

 

去年までの「家づくり」は、1日がかりで多摩川の土手に小屋を建て、

すぐに壊さなければならないという、ちょっと切ないものでした。

http://www.2tael.co.jp/blog/index.php?ID=975&cID=5

 

それが今年は、山梨で合宿生活を送りながらの「本気の家づくり」です。

去年までの掘立小屋から考えると、

サイヤ人がスーパーサイヤ人になるくらいの、どえらい進化です。

 

 

そもそものきっかけは今年の1月、

「せっかく家を建てても壊さなきゃならなくて、可愛そうなんですよね」

と、メンターでもある心理学の先生にボヤいたのが始まりでした。

 

すると

「あら、そしたら山梨のE寺さんで建てさせてもらったら?」

と軽いノリで言われました。

 

聞けばE寺さんは、同じ心理学を学ぶ先輩のお寺さんで、

お庭が広いから、いくらでも家を建てられるとのこと。

すでにツリーハウスや、他の土曜学校で作った家が多数あるとか。

 

さっそく先生にE寺さんを紹介してもらい、

土曜学校の「家づくり」の経緯を話すと、にっこり笑って

「ぜひどうぞ。暖かくなったら、一度見にいらっしゃい。」と言われました。

 

 

「壊さなくていい家を建てられる!!」

私は興奮して、土曜学校の同僚の教師にE寺さんの話をしました。

みんな、賛同してくれると思ったのです。

 

・・・でも、現実は超シビアでした。

 

1.家をつくる材料をどうやって運ぶの?

2.山梨まで子ども達をどうやって連れて行くの?

3.いつか家を解体する時はどうするの?

4.何かあった時はどうするの?

5.引率は誰がするの?

6.合宿や材料などの費用はどうするの?

7.保護者をどうやって説得するの?

 

・・・課題が山積みだったのです。

 

思えば土曜学校では、宿泊行事をしたことがありませんでした。

私自身、過去に2日間の子ども会のキャンプの引率をしたことはあるけれど、

自分が責任者となって、3日間も子どもを引率するのは初めてでした。

 

あれこれ考えると、期待よりも不安が大きくなって、

「やっぱ無理かも」という結論を、自分の中でこっそり出していました。

 

 

「ぜひどうぞ」と言ってくださったE寺さんに、お断りしなければなりません。

ツリーハウスも見たかったし、思いきって山梨まで行くことにしました。

 

E寺さんは、富士山麓の大自然に抱かれた素敵なところでした。

ちょうど原発事故のすぐ後だったこともあり、

「ここなら子ども達も外で思いっきり遊べるなぁ」と思いました。

 

とはいえ、山梨で合宿なんて、私には絶対に無理!!!

 

ところがE寺さんのご住職から、

「知り合いからログハウスの廃材をもらったので、

材料はあるから、よかったら一緒に作りませんか?」

という、夢のようなお話を頂きました。

 

そんなオイシイ話があっていいのか!?

とりあえず「1.材料をどうやって運ぶか?」は難なくクリアです。

でも、他にも課題はたくさんあるし・・・

 

・・・と二の足を踏んでいたら、

2.バス停から近いので、高速バスに乗れば、ドアtoドアで連れてこられる。

3.長持ちする丈夫なログハウスを建てるので、解体の心配は無用。

と、いきなり課題の半分が解決してしまったのです。

 

とはいえ、

「4.何かあった時」「5.引率」「6.費用」「7.保護者の説得」は残ったまま。

 

けれども私は、

「このご時世、子ども達には本当の意味での“生きる力”を身につけてほしい。

だからこそ、ここ山梨で、本当の「家づくり」を体験させたい!」

と、すっかりその気になってしまったのです。(←単純)

 

「やる!」と決めたら、あとはどうやって山梨での「家づくり」を実現するか、

具体的な方法を考えるのみです。

 

よその学校の先生に「キャンプ保険」というものを教えてもらい、

「4.何かあった時」はクリアできました。

 

そしてもう一度、同僚の教師たちに協力を申し出ました。

「家づくり」は3日間なので、土日+1日は仕事を休まないとなりません。

(教師は全員、平日は他の仕事をしています)

さらに予算がないので、手弁当で来てもらうという散々な条件です。

 

でも、「やっぱり、どうしても山梨で家づくりをやりたい」と話したところ、

3人の教師が来てしてくれることになり、「5.引率」もなんとかクリア。

 

残るは「6.費用」と「7.保護者の説得」。最大の難関です。

 

なぜわざわざ山梨で合宿してまで「家づくり」をやりたいのか、

そもそも「家づくり」とは何なのか、など私の考えを保護者に話し、

「準備も大変だし、お金もかかるけれど、協力してほしい」と伝えたところ、

不安や心配、様々な意見もあったものの、

最終的には同意を得て、ようやく「家づくり」実現にこぎつけました。

 

 

そんなわけで1学期の休日のほとんどを、

「家づくり」の準備や打合せに費やしました。

プライベートを全て捧げるだけの価値が「家づくり」にはありました。

 

そして、この「家づくり合宿」を通して、

私は子ども達に、ある希望を託していました。

 

 

それは「自分に自信を持つ」ということです。

 

 

3年生ぐらいになると、勉強も難しくなり、体力面でも差が出てきて、

能力の個人差が目立つようになります。

子ども自身も「自分は○○君に比べて○○が出来ない」などと

他人と自分を比較して、劣等感を抱くようになります。

 

ここで芽生えた劣等感は、意外としぶとく、後々まで尾を引きます。

「どうせ自分は何をやってもダメ」という自己肯定感の低さにつながり、

何事もやる前から諦めて、チャレンジしない子どもになってしまいます。

 

だからこそ、今この時期に

「やればできる」「自分はできる」という自信を持ってほしかったのです。

 

というのも、実はクラスに少し気になる子がいたのです。

A君は早生まれで体が小さく、すこしゆっくりペースの男の子。

すでに「自分はみんなのようにうまく出来ない」という思い込みがあり、

いつもどこか自信なさげで、うつむきがちな子どもでした。

 

けれどもA君は自然が大好きなので、山梨のE寺さんのフィールドなら、

思う存分、自分らしさを発揮できるだろうと思ったのです。

 

そして、自然の中でみんなと一緒に「家づくり」に取り組めば、

多少の困難があっても、乗り越えられるだろうと思いました。

 

実際、体の小さいA君にとって、

ログの角材を運ぶのも、ネジを締めるのも、ノコギリも、鉋がけも、

とても力を使うしんどい作業です。

 

  けれども彼は、3日間、

最後まで投げだすことなく黙々と作業を続けました。

そして最終日、

「家づくり」最大の山場である屋根のネジを締める作業で、

一人ずつ命綱をつけて、屋根に上ったときのことです。

A君ははじめ、屋根に上るのをためらっていました。

屋根の上は私でもちょっと怖いなと思うくらいの高さで、

子ども達、とくに体の小さなA君にとっては、大きなチャレンジでした。

すると指導してくれた棟梁が、A君にこう言いました。

「怖かったら怖いと言っていいんだよ。

正直に怖いと言えることはとても勇気のいることだ。

無理しないで見ていてもいいんだよ。」

その言葉に逆に勇気づけられたのか、

自分の順番が回ってきた時、「やる」と言い出したのです。

そうしてA君は、ゆっくりと慎重に屋根に上がり、

1つずつ丁寧に、しっかりとネジを締めていきました。

ネジを締めている時のA君の真剣な表情は、

普段の教室では、なかなか見られない顔でした。

A君が屋根から降りてきた時、私は

「よく頑張ったね!」と声をかけました。

するとA君は、自信に満ちた誇らしげな顔で、

「うん!」としっかり私の目を見て答えてくれたのです。

A君が、山をひとつ越えた瞬間でした。

正直、泣きそうになりました。

今思い出しても、グッときます。

いつもどこか自信なさげで、うつむきがちだったA君が、

しっかりと私の目を見て答えてくれた。

それだけでもう充分でした。

これから先、彼らは様々な困難に遭遇するかもしれません。

「もうダメだ」と諦めそうになることもあるかもしれません。

でも、山梨の富士山のふもとで、みんなで力を合わせて家を建てたことは、

消えない炎となって、彼らの中で燃え続けると思うのです。

あの時、「一人で屋根に上った」ことは、きっとどこかに残るはずです。

いつか子ども達が大きくなって、自分の足で歩きだす時に、

今回の「家づくり」が彼らの力になればいいなと願っています。

私自身、ひとつ自分の限界を超えることができたように感じます。

(いっぱいいっぱいだったけど…)

  「やる!」と決めたら、やるしかない。

  決めたら限界を超えられる。

決めたら、みんなが助けてくれる。

 

私一人じゃ、到底なし得なかった山梨での「家づくり合宿」。

E寺さん、棟梁、同僚の教師たち、保護者のみなさん、

その他たくさんの力を貸して下さった方々、何より頑張った子ども達、

みんなの力で、不可能が可能となり、ひとつの夢が実現しました。

(みなさま、本当にありがとうございました)

 

「自分はここまでの人間、と決めてしまったら、それ以上は成長できない」

と常日頃、岡田から口を酸っぱくして言われていましたが、

まさにその通りだと今回の「家づくり」を通して実感しました。

 

忘れられない、「ひと夏の体験」となりました。

 

みなさまは、どんな夏を過ごされたのでしょうか。

どうぞ素敵な週末をお過ごしくださいね♪

 

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